抱かれた日③

ベッドの上で正座をした私は彼の目を見て話し出した。

「今から抱いてほしいけど裸になるとびっくりするか引いてしまうか私を抱けないかもしれない。」

「まさか、実は男とか?」少し笑ってしまった私。上司と部下の時は持病があって通院して治療中とは休みをもらう理由として伝えていた。大病だったとは知らない。

私には左胸がない。全摘の手術を受けたから。

裸になると触れられるとわかってしまう。

テレビの明かりだけの部屋でシャツを脱いだ。彼は「大変な思いしたんやなぁ。」とポツリ。

私に近付いてキスをした長い長いキスをして

彼は私を抱いた。

夢中で彼の名前を呼び、好きと叫び彼の全てを愛した。私の中で果てた彼。

愛する人に抱かれた幸せをかみしめて眠っている彼を見ていた。

いつの間にか私も眠っていた。彼の隣りで。

早朝、5時過ぎに目が覚めまだ眠る彼にキスをした。瞼、こめかみ、鼻、耳、首すじ、少しずつ大切にキスをした。何度しても足りない。身体中にキスをした。そうすると彼も反応して私を引き寄せた。甘い甘い二人だけの時間。

彼の長い腕は今私だけの為に使われている。

彼に愛され二人で果てた。


仕事に向かう彼を部屋から見送った。

「行ってらっしゃい。またね。」

「行ってきます!」

一人になった部屋で私は眠った。彼を思って。


私はどこに向かうのかどうなっていくのか?

答えはないけれど。彼を失いたくない。

彼に身体を見せた時こうも言った。

「自分の為に生きたい。」

病気が私を変えた。良くも悪くも。

正しいとは思っていない。

ただ正直に生きたい。


妻に、母に戻るため身仕度をし電車に乗った。

私は悪魔だ。