向き合う

先にカフェに到着した私はいろんな感情が混ざって落ち着けなかった。

二人きりで会える嬉しさと最後かもしれない寂しさが交互にやってきた。あったかいコーヒーとイヤホンから流れる音楽を聴いて待っていた。なんて話そう?今更ながら恥ずかしい。そうこうしていると彼からメールで何分着の電車で向かってると知らせがきた。あと少しで彼がやってくる。嘘みたい。夢みたい。

テーブルをトントンとたたく彼の手が視界に入った。「お疲れ様です。ほんまに来てくれたんや。ありがとう。」大好きな彼が目の前にいる。胸がいっぱいになった。彼もコーヒーをオーダーし話始める。カフェには他にもたくさんの客がいて人目が気になり外に出ようか?と街中にでた。

話する場所がない。カラオケボックスは?と提案。実際入るのは10年以上ぶり。ここならゆっくりしゃべることできると入店。狭い部屋で歌うことなく私が話しだした。

「こんなこと言える立場でないこと承知で言います。明日で会えなくなるのは嫌です。この先も二人で会いたい。私の気持ちに向き合ってほしい。」しばらく考えていた彼が「恋愛感情はないけど、明日が済んだら上司と部下でなく、ツレとしてなら会える。」

振られた?ツレ?友だちか。

彼は自分のことを話してくれた。私の知らない彼をたくさん知った。

いつのまにか隣に座り大胆にも手を握っていた。手を繋ぎながら時々笑い楽しい時間だった。

結論を出さず会うことになっていた。

「キスしてほしい。」そう言って彼に自分からキスをした。一度してしまうと何度もしたくなり彼の首に抱きつき「ずっとこうしたかった。」

彼は私の背中をトントンと優しくたたいた。

帰りの時間が迫っていた。

次にまた二人で会う約束をし店をでた。

数時間前とは違い確実に距離が縮まっていた気がする。

駅までの道自然と手を繋いで歩いた。

どうなるかわからないけど最後にはならなかったことに安心し帰路についた。

まだ二人は付き合っていない。始まってもいない。

ただのツレ同士

次の日、彼との仕事最終日を迎えた。

いつもと違うのは朝一から私は彼にキスをせがんだ。抱きしめてとも。会社内ではアカン!と言われたがもう一度言うと…してくれました。

でもまだ二人は始まっていませんでした。