哀しい予感

秋になり、益々仕事が忙しくなっていった。職場では病気を公表していないので見るからに健康体の私に体力を使う仕事が回ってくる。

できません!なんて性格上言えず頑張っています今も。一応主治医には仕事の内容を伝えて許可をいただいてるので大丈夫です。

この頃から彼とはよく目が合うようになった気がしました。多分わたしの視線を感じているのか?いつも彼を目で追ってるからだと思う。半分告白したようなもんだし。

そういう時はニコッと笑うようにしました。

この会社の敷地内でだけ思わせて。

敷地から一歩でも出たらわたしはお母さん、嫁さん。切り替えて帰りを急ぐ毎日でした。


秋も深まりつつある時、転勤というワードがついに彼の口から出始めました。

決定ではなくいつかわからないけどあると。

年明けにはわかる。


あと長くても3か月か。平然としていないといけない私。心の中は動揺しまくっていました。


泣くことが増え、また彼に話しかけられなくなっていきました。

彼がいなくなる、会えなくなるなんて。

これでいい。ちょうど良かった。泣いてすむ。

さみしいのにも慣れていける。

自分に言い聞かせながらその日が近づいて来ることに怯えていました。

外の世界

眠れない日々は続いていた。

なんとか前を向かなくてはと夫に働きたいと聞いてみた。夫には運動と気分転換になるしと。

本当は養われてる身で高額な治療費を使ってしまってるのが申し訳なく、せめてそのお金は自分で稼ぎたい、大した生命保険金にはならないからもしもの時に少しでも家族にお金を残したいとの思いからでした。

あと社会にでて純粋に働きたかったのです。

すぐに見つけたパートは黙々と二人きりでする作業でした。週に4日6時間程。働きだすと疲れて少しずつ眠れるようになりました。

病気のこともだんだん深く考えなくなり主治医にすへてお任せしてパートと主婦業に励んでました。

仕事を始めて1年後、もっといろんな人と話がしたい、働きたいと強く思い新たな仕事を見つけました。そこに彼がいたのです。

まさかこんな風になるなんて。

私がいなくなる生活。

家族以外知らない事ですが…

実は2年前の冬に大病にかかり手術を受けました。それなりの病気でした。

今も定期的な検査と薬での治療をしています。

病気を告知された時死を意識しました。

淡々と自分の死後家族が困らないようにしないとと治療も始まらない時期に生活に関する色んなことをノートに書き出しました。

手術して2日程経った時急になんとも言えない味わった事のない恐怖と不安に襲われその日から眠剤をのんでも眠れなくなりました。いつ襲ってくるかわからない強烈な不安感。

それが退院してからも1か月以上続きました。

自殺したい人の気持ちがわかった気がしたのです。その場にいたくない、走り出して飛び降りたい、死にたい死にたいとばかり考えていました。今思えば鬱っぽかったです。

病気を公表していないので外に出たら普通にしていましたが家では部屋に閉じこもっていました。

わたしがいなくなっても困らないよう少しずつ家族と距離を置くように。

彼に出会う一年前の事でした。